具体と抽象の間にある、人を惹きつけるカタチを探そう!D-LANDのロゴを美大生12名と高田唯さんがデザインした

D-LANDの「D」はドキドキの「D」、そしてデザインの「D」です。

美大生の放課後活動拠点「D-LAND LOUNGE」の運営をはじめ、額装したくなるフリーペーパー「D-LAND PAPER」の制作・発行や美大生がものづくりを学ぶトークイベント「D-LAND TALK」の企画・開催など、美大生のアイデアや創造性で社会に新しい価値を残していく事業を行なっています。

そんなD-LANDには、シンボルとなるロゴマークがまだありません。そこで、ロゴのデザイン制作を株式会社オールライトのデザイナー・高田唯さんに依頼しました。打ち合わせを重ねる中、高田さんはD-LANDの活動に共感してくれて、ある提案を持ちかけてくれました。

それは、「D-LANDらしく、美大生と一緒にロゴをデザインしませんか?」という新しい取り組みです。こうして、2018年10月12日に開催したイベントが「D-LAND LOGO DESIGN PROJECT 第1回『ギリギリDに見える(見えない)カタチ』」でした。定員12名の募集が翌日に満席となった、このイベントの模様をレポートします。

髙田 唯(たかだ ゆい)
グラフィックデザイナー/アートディレクター株式会社Allright取締役。
1980年東京生まれ。桑沢デザイン研究所卒業。good design companyを経て、2006年デザイン事務所「Allright Graphics」設立。2007年活版印刷工房「Allright Printing」設立。2017年音楽レーベル「Allright Music」設立。
東京造形大学准教授。

 

具体と抽象の間にある「D」を探そう!

1日開催予定だったイベントは、悪天候に見舞われて、12日開催に延期。参加者全員が予定をリスケジュールすることになったものの、欠席者0名で開催することができました。この日のイベントでは、まず高田さんがロゴをデザイン制作する際に意識していることを聞くところからスタートしました。

高田さん 「デザインの仕事をするときは、さまざまなことを意識しています。ですが、大前提となることは、『なぜ私たちに依頼してくれたんだろう?』ということです。依頼主がどんな人なのか、あるいはどんな会社なのか、教えてもらってはじめてロゴのデザイン制作はスタートします」

高田さんの場合、依頼主とは必ず対面で会話をするそうです。その際に、人や会社のエピソードを聞くだけでなく、出で立ち、服装、性別、話し方など、接することで知り得るすべてがロゴをデザインするヒントになると言います。

高田さん 「D-LANDについて教えてもらったとき、美大生と一緒にロゴをつくるという実験的なアプローチを受け入れてくれる会社だと思いました。そこで、このイベントを開催するきっかけが生まれたんです」

正直なところ、高田さんからの提案を受けたとき、D-LANDはどんな結果が生まれるのか想像できませんでした。そんなドキドキ感さえ、D-LANDらしいと思えたことがこのイベントを開催するきっかけになりました。そして、イベントを開催するにあたり、参加を希望する美大生に向けて、お題を設けようという話になりました。

お題は、「ギリギリDに見える(見えない)カタチ」を探り、イベント当日にラフスケッチを持参してくること。なぜ、このようなお題を設けたのでしょう?

高田さん 「ギリギリを狙う理由は、見たことのない形に出会いたかったからです。初めてのものごとや形には『ドキドキ』や『?』が含まれます。そのような要素が持つ、人を惹きつける力をD-LANDのロゴの「D」には宿らせたいと思いました。『具体』では、心に残りづらい。『抽象』では、予測や想像、解釈を見る人に委ねてしまう。双方のギリギリのところにこそ、D-LANDの『D』があるだろうと考えました」

 

驚きと想いの両方を表すD-LANDのロゴを目指そう!

美大生12名は、思い思いにお題に取り組み、ラフスケッチを持参しました。Dの塊を意識したスケッチ。正方形を描いたり削ったり。フリーハンドで描いたDも持ち寄られました。なかには、紙に印刷したDを切り抜き、何度もなんども車にひかせてボロボロになったDをスキャニングしてきた美大生も。

高田さんは美大生にこのような質問を重ねていきました。

Dに見える、Dに見えないを探るなかで、どんな印象を受けた?
私たちはDをつくっているという認識があるからDだとわかるけれど、何も知らない人が見た場合にDに見えるのかどうか考えてみることができるよね。
一番好きなDはどれかな? お気に入りのDを教えてくれるかな?

美大生の発表を聞きながら、D-LAND自身にも新鮮な気づきがありました。それは、Dとdでは半円の向きが逆になっているということ。なぜ、半円の向きが逆さになるんだろう? D-LANDのDに適しているのは、Dとdのどちらかな?

美大生が発表を終えると、続いて12名が持ち寄った12通りのDを見て、各々が気に入ったDを選んでいく工程に移りました。これは順位付けすることを目的とはしていません。例えば、新しい発見を持ち帰るために他の美大生が描いたDをよく見る目的で投票するようにしてみました。その様子を見て、高田さんは美大生がどんなDに好感を覚えているのか観察していきました。

高田さん 「このロゴはどんなことに使っていくんだろう? 発想が面白いものでも、運用しにくいものはあまりよくないよね。今みんなのアイデアが出そろったので、あとは紙やWebで使いやすいような形を見つけていきましょう。出そろったアイデア以外にも、どんな可能性があるのか。もう1度、これだけの人数で集まることは難しいと思うけど、オンライン上でやりとりできるようにできるなら、もう何回かお題に答えてもらって、最終的なロゴをつくっていきたいですよね」

こうしてLINEグループを用意することになり、美大生12名や高田さんと一緒に、引き続きD-LANDのロゴを考えていくことになりました。

このイベントを通じて、D-LANDは美大生と一緒にロゴをつくっていきたいと、改めて実感しました。プロのデザイナーにロゴを依頼するなら、発注した意図を汲んでロゴをデザイン制作してもらえます。しかし、それよりも、美大生12名が見せてくれたDが表している新しいデザインの可能性に魅せられて、それをD-LANDのロゴに取り入れたいと、再確認できたからです。

それはD-LANDの「D」が示すドキドキには、ひとつの感情が含まれているわけではないという気持ちが高まった証でもありました。このドキドキという感情には、デザイン制作をするうえでの効率性やルーティーンワークに対するアンチテーゼも含んでいます。

それだけに、どのようにしたらDという文字がこのような形に仕上がるんだろうという「驚き」もデザインしたDにしていきたい。美大生12名がそれぞれ考えたDがまったく異なる12種類の形を見せてくれたように、D-LANDのロゴも見るたびに変化するようなデザインになっていてもいいのかもしれませんね。

そのようなドキドキを表すDをロゴに仕上げるうえで、最も大切にしておきたいことは、ある意味、驚きとは真逆にある骨格を整えるということだともわかりました。D-LANDでは、美大生とさまざまなプロジェクトに挑んでいきますが、そこには共通の理念や目指すゴールがあります。そういうD-LANDの大切な想いも形から感じてもらえるようにするための骨格です。

一体これからどんなロゴマークがデザインされていくのでしょう。11月16日に開催する、ロゴのお披露目会まで美大生とのデザイン制作は続いていきます。

 

 

→美大生と一緒にドキドキをデザイン!
額装したくなるフリーペーパー「D-LAND PAPER」創刊&D-LANDロゴ完成記念イベント